ミノル・ヤマダ
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事務局長のザ・ナショナル・トラストレポート

N.T.E.ジャパン・クラブ事務局長が、英国の、日本の、
そして世界のナショナルトラスト活動など、ニュースをお届けします。

2007年6月1日(金)

72年前の不法ウオーキング

ウオーキングやトレッキングといえば、英国で最もポピュラーな余暇のひとつでしょう。 日本でも近年、健康に良いとか、有酸素運動で健康的にダイエットできるなどの理由から街の中でも住宅地でも、せっせと歩いている人もよく見かけます。一方天気の良い休日などには、リュックを背負って山登りを楽しんでいるグループや家族連れも、見かけます。日本でのウオーキングを見ていますと、皆さん何らかの目的があって、歩くことそのものを楽しんでいるという人は少ないのではないでしょうか?ましてや「歩くことは市民の権利だ!」などと思って歩いている人は、ほとんど皆無でありましょう。

さて、英国の美しい田園地帯には、遊歩道、フットパスが縦横にはしり、みんな楽しそうにただ歩いています。この「楽しみ歩く」のを英語でランブル(ramble)と言います。
これは単に歩くというウオーク(walk)ではなく、「楽しみとして歩く」という意味の言葉です。このランブルするというのは英国ではずいぶん昔からあり、その権利まで獲得しようとした歴史まであるのですから驚きです。

今から72年前、1935年4月24日約500人のランブラーたちが、現在ではピーク・ディストリクト国立公園の一部として指定されている「キンダー・スカウト」と言うムーアランド(低木のみの荒野)に不法侵入のウオーキングを行ったのです。これは、明らかにランブリングではなく、美しい田園地帯への自由な立ち入りを求めるという目的を持ったものでした。これを阻止しようとした野鳥の飼育業者との間で、短くもかなり激しいやり取りの後、不法侵入者たちは目的地まで歩き通すことに成功。この活動は、田園地帯への市民の立ち入りをより広範囲に認めさせようとした活動の歴史で重要な出来事となり、その後の国立公園の成立や、近年では2004年施行のカントリーサイド・ライツ・オブ・ウェイ法(田園地帯の自由移動権)の制定へとつながっているのです。

英国ザ・ナショナル・トラストは、1906年からピーク・ディストリクトの保護活動を行ってきました。活動のポイントは保護と公開です。田園地帯、ヒース・ランドやムーア・ランドの公開とは人々が歩き楽しむ権利を確保することです。この人々が広大なアウトドアを楽しむ権利をさらに拡充するためのキャンペーンは、19世紀に英国ザ・ナショナル・トラストを設立した3人の有名な市民の1人、オクタビア・ヒル女史が田園地帯へのより良いアクセスを求めた活動とも軌を一にするものでした。

今から25年前にわずかな土地をキンダー・スカウトに入手して以来、買い取りをどんどん進め、いまやこの高原地帯のほとんどを、2つの農場を含め所有しています。そして、近年取得した残りの47ヘクタールを加えることによって、ついに英国ザ・ナショナル・トラストは、キンダー・スカウト全体をその保護の手の中に収めることになったのです。この機会に、先ほどの72年前の人々の行動を記念して、15万本のコットン・グラスの植樹やピートの種まきのボランティア活動を5月に行いました。この活動は、ピーク・ディストリクト国立公園内のプロパティ、キンダー・スカウトの広大なムーアランドの美しいヒースの丘陵地帯を維持するためのものです。

このような歴史をもつ英国のウオーキング、いやランブリングやトレッキング。美しい田園地帯が先か、それを愛する人たちが先か。今となっては、卵か鶏かといったお話です。 しかし、今日の美しい田園地帯を見ると、それらを美しいと思い「ランブルする人」が心から楽しめるという点において、どちらが先でも良いのでしょう。

-以上英国ザ・ナショナル・トラスト公式サイト他からご紹介。

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