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事務局長のザ・ナショナル・トラストレポート

N.T.E.ジャパン・クラブ事務局長が、英国の、日本の、
そして世界のナショナルトラスト活動など、ニュースをお届けします。

2007年4月2日(月)

30才を迎えた北海道のナショナル・トラスト

今からちょうど30年前の1977年に、北海道斜里町が音頭を取って英国ザ・ナショナル・トラストの活動にヒントを得た活動がスタートしました。それが「しれとこ100平方メートル(以下m²)運動」です。当時の知床は、1964年に国立公園の指定を受けたこともあり列島改造ブームを背景に、1971年のヒット曲「知床旅情」の影響で土地の投機ブームが押し寄せました。1976年には国立公園内の100haにも及ぶ土地が不動産業者の手に渡り、無秩序な乱開発が行われようとしていたのでした。

そのような状況を憂いていた斜里町では、この地を不動産業者から買い戻し、植樹し、元の原生林へ戻す方法はないものかと模索していました。そのとき、1月の朝日新聞の天声人語に英国ザ・ナショナル・トラストの活動が紹介されたのです。当時の藤谷斜里町長は「これだ」と思ったそうです。この英国の美しい自然や歴史的遺産などを買い取って保存する市民の活動を参考に、斜里町では早速翌月「しれとこ100m²運動」をスタートさせました。この誰でも参加できる、ナショナル・トラスト方式の活動は、人々の理解と協力はもちろんのこと、関東及び関西支部の支援活動などが側面的に支えたこともあり、その後20年で当初の目的を達成し、さらに今はその森を育てる活動を行っています。その「しれとこ100m²運動関西支部」世話人代表の笠岡さん(写真の方)に、一文を寄せていただきました。

「しれとこ国立公園内100m²運動と共に30年」

北海道の東北部に65kmにわたって突き出た知床半島、その中央部にそびえる1,661mの羅臼岳の西北斜面の台地、そこは大正時代以降、数度にわたり開拓者が入植しましたが、そのつど、挫折・離農され、結果破壊された自然だけが放置されてきた場所だったのです。1977年9月23日、当日ここで行われようとしているのは、その年の2月から始まった「しれとこ国立公園内100m²運動」の第1回目の現地植樹でした。

この日知床は快晴で、集まった人は約70人、私が一番遠く(京都)からの参加者でした。植樹地は有名な知床五湖に近く羅臼岳を正面に望む斜面で、北海道に多いアカエゾマツの苗木を植えるのです。1人3本の苗木が割り当てられました。ちょうど道路からよく見える位置に1mほどの黒い岩が在ったので、私は50年後にここへ来ても自分が植えた樹だと判るように、その岩を目印に植えることにしました。ひと鍬目は簡単に跳ね返されました。土壌が薄く拳大の石がゴロゴロした土地でした。さらに驚いたことには、石の下から破れてボロボロになったゴム長の片方が現れたのです。軍手の片方や割れた茶碗のかけらも出てきました。今は原野と化していますが、ここは疑いもなく入植者のくらしが営まれていた場所なのです。私は、ここに新天地を目指して入植しながら、整っていないインフラ、悪い土壌や厳しい気象条件により、夢半ばにして撤退を余儀なくされた人たちの無念さを偲び、涙が出て仕方がありませんでした。

あれから30年、第1次の土地の買戻しに係る運動は1997年に終わり、現在は第2次の森を育て生態系を回復させる運動に移っています。そして知床は2005年に世界自然遺産に登録され、年間100万人以上の観光客が訪れるまでになりました。しかしその陰には無念の思いで去って行った人や、その開拓跡地を100m²当たり8千円の寄付に応じてくださった5万人近い運動参加者の熱意、そして取得した開拓跡地、約860haにこの30年間で50万本に及ぶ植樹を続けて来られた斜里町、いろいろな人たちの思いや行為が知床に凝集しています。そしてこれらの思いや行為が世界自然遺産に登録された一番重要な要素だったのです。森を育て生態系を回復させる運動に終わりはありません。未来永劫エンドレスに続くのです。英国ザ・ナショナル・トラストの活動とは似て非なる運動ですが、その精神は同じなのです。皆様のご協力をお願いします。」

= 以上「しれとこ100m²運動関西支部」の世話人代表 笠岡 英次 さん=

ここ知床では、1982年に、国内で初めてのナショナル・トラストを考えるシンポジウムが「しれとこ100m²運動」5周年を記念して開催されました。このシンポジウムで「知床アピール」が採択され、その後の「ナショナル・トラストを進める全国の会」(現:社団法人日本ナショナル・トラスト協会)の発足につながって行きました。英国の112年と比べると30年は短いようにも思われますが、されど30年。知床は、日本のナショナル・トラストの理念に基づく環境保護の歴史において、重要な記念碑となるでしょう。

-以上、N.T.E.ジャパン・クラブ事務局

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