N.T.E.ジャパン・クラブ事務局長が、英国の、日本の、
そして世界のナショナルトラスト活動など、ニュースをお届けします。
2007年2月1日(木)
昨年11月、美しい田園地帯でハート・オブ・イングランドと呼ばれるコッツウォルズにある町チェルトナムで、英国ザ・ナショナル・トラストのスタッフと会員が集まりA.G.M.が開催されました。
今、英国ザ・ナショナル・トラストの会員数は、なんと340万人を越えていますが、設立された1895年には100人にも満たないささやかな団体でした。 その後1926年に1000、1946年に1万、 1961年に10万、そして1981年に100万の大台へ。そして、1990年に200万、と増加し2002年に遂に300万となり、その後も延び続け現在340万に至っています。 100万までは86年、200万までは18年、そして300万までは12年という増加の仕方で、特に1970年以降の伸びが顕著なものとなっています。これは、社会状況の変化で、個人からの大口の遺贈や寄贈などの支援が減ってきたことがその背景にあるのでしょう。設立当初から非営利の市民活動、いわゆるNGO団体である英国ザ・ナショナル・トラストにとって活動を支えてくれる会員は重要で、いかに会員獲得に力を注いできたのかということが推察できます。
そんな英国ザ・ナショナル・トラストには会員を獲得するため、会員になれば得られる多くの特典を準備しています。その中の最大のメリットは、なんといっても入場料が必要な英国ザ・ナショナル・トラストのプロパティ(保護資産)に無料で入れること。 英国ザ・ナショナル・トラストの駐車場の無料利用、100以上の姉妹団体スコットランド・ナショナル・トラストのプロパティへの無料入場 や 機関誌やハンドブック などです。 そして、会員の権利として、年に一度のA.G.M.に出席し、その活動に意見を反映させることが出来ることになっているのです。
昨年のA.G.M.での挨拶で、プロビー会長は英国の自然と歴史の環境を守る最も重要な役割は、いわゆる私達の「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」の維持向上であることを強調しました。「近年、多くの政治家達がクオリティ・オブ・ライフを口にしますが、私達はそのことを以前から熟知しているのです。」
つぎに、最近の保護活動の成功例と、より強化された財務体質や運営実態を報告し、「私達は決して自己満足できる状態ではありません。 いままで100年の経験から、私たちの遺産の脆弱さを知っているからです。火災、洪水そして強風などがそれですが、しかし経済成長への強い流れや、最近次第に顕著になりつつある気候変動もあるからです。」と述べています。かわって、レイノルズ理事長は政府の環境保護への歳出カットを捉え
「一般の人々の意見は、私どもと同じでしょう。どんな政府であれ、私たちの社会の文化的、精神的不健全性を示す危機的な指標の改善のために、もっと努力の余地はあったし、これからはもと推進しなければならないでしょう。」これは、例えば謎の環状列石「ストーン・ヘンジ(イングリッシュ・ヘリテッジのプロパティ)」の周辺整備も放置されているなど、昨年政府から支援を受けている環境保護団体への予算が削減されているからです。理事長はさらに、
「私たちの文化的生活、自然環境、歴史的建造物の質は、社会の福利に加えられるものではありません。それらは、福利の基本的部分であり、そのように取り扱われるに値するものです。」と思いを表明したのでした。
私たち日本人も、個人の資産を主なる豊かさの物差しと考えるのではなく、「持たなくても感じられる豊かさ」を求めてゆくことも、全体のクオリティ・オブ・ライフの向上に欠かせないことではないでしょうか。そういえば、詩人でもあり思想家でもあったアメリカのナチュラリスト、ヘンリー・デイビッド・ソロー( 1817〜62)に「人間は、なくて済ませることが出来る物の多さに比例して豊かである。」と言う言葉があるのを思い出しました。
-以上英国ザ・ナショナル・トラスト公式サイトのニュースなどからご紹介。