N.T.E.ジャパン・クラブ事務局長が、英国の、日本の、
そして世界のナショナルトラスト活動など、ニュースをお届けします。
2007年1月4日(木)
英国ザ・ナショナル・トラストは民間の環境保護団体です。「皆のために、永遠に」という精神で、美しい自然や歴史的建造物などを主に買い取って所有することで、その保護を確実にしつつ、一般公開しています。
この保護と公開という一見相反するようなことをうまくバランスをとって実行しているのが、ザ・ナショナル・トラストのザ・ナショナル・トラストたるゆえんです。
ところで、保護と公開がうまく行かない場合はどうするのでしょう。答えは簡単、保護が優先されるのです。なかでも、その保護が難しいのが歴史的建造物や庭園でしょう。 英国ザ・ナショナル・トラストは、大邸宅などの歴史的建造物と庭園を215軒、博物館を150ヶ所、工場と鉱山などの産業記念物が127ヶ所、城郭が28、村落が57、中世の養鳩舎が47、中世の納屋も25、水車・風車が78、そしてパブが19軒、さらに灯台まで12ヶ所を受け入れているのです。3千人のスタッフがいる英国ザ・ナショナル・トラストとはいえ、これだけの膨大数の歴史的建造物を広く一般公開しているのですから、大変なことです。そこで、ボランティアが登場するのですが、いつも朝から晩まで公開するというのは現実的ではありません。
そこで、プロパティの訪問者の数やピッチに応じてオープンする時間を限定しているのです。例えば、ケント州にある大変訪問者の多いチャーチル首相の館「チャートウェル」のケースで説明しましょう。公開する日ですが、3月25から10月29日まで水曜から日曜までで、月曜と火曜は定休日となっています。ただ、夏の7月・8月は火曜も公開となります。 時間の方も朝11時から夕方は5時までの6時間のみです。この期間以外の10月30日から翌年の3月24日までの5ヶ月間は一般公開してない、要するに「閉まっている」ということになります。
ということは、冬場を中心に英国ザ・ナショナル・トラストは5ヶ月も長~いバカンスなのでしょうか? いえいえ、実際はそうではありません。逆に、閉まっているときのほうが忙しいということもあるのです。というのも、建物や庭園などは多くの観光客の訪問で床やカーペット、園路などが傷んだり、汚れたりしているのです。そこで、この閉鎖の時期は貴重なメンテナンスの時間なのです。ザ・ナショナル・トラストは、そのプロパティの維持や修復の作業を、冬場に特別公開することで活動に対する理解も合わせて得ようとしているのです。
ザ・ナショナル・トラストの専任の職人達は、ザ・ナショナル・トラストが所有するカントリー・ハウスの美術のコレクションや家具調度品などを、館の閉鎖中に復元したり、清掃したり、修理しているところを特別にのぞいて、自分の家の家具やコレクションための、メンテナンスに関する智恵やコツを学んでもらおうという粋な企画です。
例えば、ロンドンとヒースロー空港を結ぶ高速道路がその敷地を横切るオスタリー・パークでは、ある冬の日曜の午前中にホーム・テキスタイルや家具、油絵などの保全やクリーニングの専門家のテクニックを間近に見てもらおうというプログラムがあります。この入場料にはモーニング・コーヒーと、別棟のレストランでのお手製のランチが含まれています。その他、各種プログラムが準備されています。 ザ・ナショナル・トラストならではの冬の楽しみです。詳しくはザ・ナショナル・トラストのホームページをご覧下さい。
寒い季節でも行われているザ・ナショナル・トラストの知られざる活動。まさに縁の下の力持ち。冬場仕込んで、春から夏にかけて美しく展開されるイングリッシュ・ガーデンに一脈相通じるものがありますね。これこそガーデニング王国の英国らしい丹精の込め方なのかも知れません。
-以上英国ザ・ナショナル・トラスト公式サイトのニュースなどからご紹介。