N.T.E.ジャパン・クラブ事務局長が、英国の、日本の、
そして世界のナショナルトラスト活動など、ニュースをお届けします。
2005年9月1日(木)
自然環境とともに歴史環境を守るのが、英国ザ・ナショナル・トラストのつとめ。その中には人々が訪れてみたいという気持ちを高鳴らせる、建築物や庭園などのプロパティが含まれています。それらプロパティの入場料も、ザ・ナショナル・トラストの大切な活動資金。保護しながら、できるだけ多くの訪問者を迎えいれることが腕の見せ所というわけです。
プロパティへ人々を惹きつける要素の代表的なものが有名人との関わり。第二次世界大戦で英国を率いたチャーチル首相、アカデミー賞受賞の映画になった"アラビアのロレンス"、湖水地方をうたいあげた桂冠詩人"ワーズワース"、20世紀の社会に音楽を通して影響を与えた4人の若者"ザ・ビートルズ"・・・多くの有名人ゆかりの建物や工芸品、土地などをザ・ナショナル・トラストは保護しています。
その中にクリミアの天使、クリミア戦争で負傷者の看護をし、近代看護制度の基礎を築いた"フローレンス・ナイチンゲール"にゆかりのあるプロパティがあります。それはバッキンガムシャー州オックスフォードの北東約30kmにあるクレイドン・ハウスです。18世紀に建てられたカントリー・ハウスで、ロココ調と当時流行していた中国調シノワズリーをミックスした美しい内装が有名。この館には380年間、ヴァーニー家の一族が暮らしていました。このヴァーニー家にナイチンゲールの姉が嫁いでいたことから、彼女はたびたびクレイドン・ハウスを訪れていました。それで今でもナイチンゲールの寝室とゆかりの品々が残されているというわけです。
さて、フロリィズ・ロリーですが、フロリィとはフローレンスの愛称で、ロリーとは荷馬車のこと。クリミア戦争での活躍で"クリミアの天使"と呼ばれ、英国の国民的ヒロインとなったナイチンゲールが、戦場を移動した馬車の名前です。1856年にロンドンで発行された新聞の挿絵に登場して以来、彼女を象徴するものとされてきました。1897年、ロンドンで開催されたビクトリア朝の万国博覧会では話題の展示品にもなっています。その後、1930年には同じくロンドンのナイチンゲール看護士養成学校に寄贈されて展示されていましたが、第二次世界大戦の爆撃で相当な被害を受け、その後はフローレンス・ナイチンゲール博物館に所蔵されています。
2005年の今年はクリミア戦争勃発から150年。フロリィズ・ロリーはナイチンゲールの偉業をたたえるため、彼女が姉に会うため頻繁に訪れたザ・ナショナル・トラストのプロパティでもあるクレイドン・ハウスへ貸し出されました。
常にクレイドン・ハウスに展示されているゆかりの品々に加え、フロリィズ・ロリーはクリミア戦争の期間と同じく今後2年間、ここクレイドン・ハウスに展示されます。残念ながらナンチンゲールが、この姉の嫁ぎ先の贅を尽くした内装を、どのように評したかについての資料は残っていないのだそう。
—以上、英国ザ・ナショナル・トラスト公式サイト2005年8月分ニュースなどからご紹介