井形慶子さんスペシャルエッセイ「私が出逢ったザ・ナショナル・トラスト」

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英国のスピリチュアルをのぞく

2007年4月2日(月)

4月に集英社文庫「英国式スピリチュアルな暮らし方」(大和書房刊生活大国イギリスの知られざる習慣改め)が出版されるため、改めてゲラを読み返した。リンボウ先生こと林望氏に頂いた解説文の冒頭にも、この本に登場するエピソードの数々に「ああ、イギリスらしいなあ」と感じ入るとあった。
本書は、19歳から毎年のように通い続けてきたイギリス社会の根底。そこに流れる摩訶不思議な感覚を具体的に書きあらわしたものだ。たとえばスコットランドで実際に泊まった幽霊の出るB&Bや、セルフリッジデパートに設置されたサンタ小屋の意味。

またインバネス近くにあるフィンドホーン財団は、世界有数のスピリチュアルパワーが放出される場。アーサー王伝説で有名なグラストンベリーと並んで何百人ものアロマセラピスト、エコロジー研究家、サイキッカーが共同生活を送っている。どれも訪ねてみると興味深い。

しかも、理屈では割り切れない様々な現象が、イギリスでは自然に人々の生活に息づいている。こんな摩訶不思議なものに出会えるのもイギリスを旅する愉しみだ。これは、古い街並みや住宅を人々が愛してやまない感覚ともリンクする。

幽霊が出る家は「歴史の証明」をする希少性があると、ふつうの家より高い値で売買されるし、フィンドホーンの創始者アイリーン・キャディは、2004年に首相の推薦によって英国女王から与えられるMBE(大英帝国勲章)を授与されている。アイリーンはスピリチュアル分野の研究を通して人々に強い影響を与えたと、社会的にその栄誉をたたえられたのだ。

今でこそ日本でも「スピリチュアル」という言葉はテレビや一部有名人の活躍で市民権を得た。だが、私達の暮らしに根づいているかと問われれば大いに疑問。下手すればこんな感覚は迷信、祟りという負のイメージで片づけられそうだ。

イギリスで名もない街の古い教会を訪ねると、建物の説明だけでなく、教会で起きた史実や関わりの深い人々のことを綴った手作りのパンフレットが数十ペンスで販売されている。過去の出来事に目をとめ、取るに足らないエピソードであっても、物語を語り継ぐように来訪者に紹介する。人々はそこに喜びを見い出す。

そんなイギリス人の心意気に触れるたび、繰り返すが「イギリスらしいなあ」とうれしくなる。目に見えない、形にならない、触れることのできないものの価値を、ぜひ日本を飛び立ち確認したいものだ。

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